NEWS
選手紹介 2021.2.15

【インタビュー】#4 藤浪 輝人 『気持ちで引っ張る』

チームトップクラスの熱いハートでチームを引っ張る藤浪輝人選手。
まだ3年目の若手ながらバイスキャプテンを任される藤浪選手の強い想いの秘訣とは?


Q.1年目加入してきた時のことを教えてください。
大学の最後に怪我をしてしまい、Hondaに入ったときは怪我人スタートでした。
長期の怪我だったので、半年近くかかり、トップリーグ開幕戦の翌週にようやく復帰できました。
その後、地元の京都で行われた第5節のパナソニック戦でデビューすることになったのですが、
先輩たちが怪我をしてしまい順番が回ってきた感じで、
言ってはいけないことかもしれませんが、その時は運が良かったんです。
でも復帰してすぐの状況で、チームのことも何もわからない状態でしたし、
さか自分が出られるとも思っていなかったので、めちゃくちゃ緊張しました。
緊張しすぎて前の日は一睡もしてないです。
なのに当日試合になればタックルしまくって、パフォーマンスは良かったです(笑)
元々緊張するタイプなのですが、あそこまで緊張したことは今までなかったです。
大学までの時はしっかり準備して試合に臨めていたのですが、
あの時は復帰後すぐでチームにフィットしている感覚もない中、1週間前にメンバー入りを言われて…
それ以前に先輩たちとの関係性も心配していました。
一緒に練習した時間が短すぎて、ちゃんと信頼してもらえてるのかとか…。
色々な面が重なり、間違いなく人生で1番緊張した試合です。

Q.でもチームにフィットするという点では同期の選手より早かった印象があります。
あんまり人に気を遣わない性格で、大学の時から自分の考えとか軸をブラさないということを大事にしています。
もちろん柔軟にすることも大切ですが、その辺りはHEATの先輩たちが
僕のことを理解してくれて上手くフィットさせてくれていたのかなと思います。

Q.軸という部分では1年目からチームを良くしたいという気持ちが強かったですよね。
一つは前田GMからチームに誘われた時からすぐにリーダーにすると声をかけてもらっていた事です。
大学の時もバイスキャプテンをしていて、リーダーシップの部分は自分の長所だと思っていました。
この小さい身体で生き抜いて行くにはここしかないかなと。
誰より身体を張るのはもちろんですが、
「これだけ小さいやつでも頑張っているんだから頑張ろう」と
周りに影響を与えられるような選手を心がけています。

Q.今までキャプテンの経験は?
中学の時だけです。
高校の時はFWリーダーだったのですが、自分で自分を役職から遠ざけていました。やりたくないと。
自分に自信がなかったというのが大きかったです。
ですが、卒業する時に『何も残らなかった』ことに気付きました。
その時にめちゃくちゃ後悔の気持ちが湧き上がってきたのを覚えています。
本当は高校卒業でラグビーを辞めようと思っていたのですが、
色々な縁があり天理大学でラグビーをさせてもらえることになりました。
大学時代もキャプテンではなく副キャプテンでしたが、
高校時代の後悔があったから今の自分があると思っています。

Q.天理大学ではどのような気持ちでプレーしていましたか?
高校時代のような後悔は絶対しないと決めて入部をしました。
なので入った時から、4回生になったら必ずキャプテンか副キャプテンをやろうと決めていました。
そのために各年代のリーダーもやらせてもらって4年間頑張りました。
最終的にキャプテンをやることになったのは、現在NTTドコモでプレーする王子拓也選手でしたが、
すごく熱い選手で波長もあって、いつもチームを良くするための話ばかりしていました。
当時はお互いに自分がキャプテンをやると思っていたんじゃないですかね?
途中から僕はどっちがキャプテンでもいいなと思ってきて、
話をする中で自分が支える役になろうと決めて副キャプテンを選びました。

Q.Hondaに入ってきてから感じたチームの雰囲気は?
大学とは違う部分ではメリハリがあるなと感じました。
締めるところは締める、抜くところは抜く。と言ったのは大学にはなかったかもしれないです。
他には年齢層がバラバラで、自分がリーダーをやるということに対してのイメージがつきにくかったです。
5歳も10歳も上の人たちがいる中でリーダーシップを発揮できるのかという不安はありました。

Q.実際3年目でバイスキャプテンをやることになりましたがどうですか?
先ほどの不安の部分は実際やってみれば、先輩たちが僕を持ち上げてもくれますし、
発言を浸透させる役目もやってくれる。本当に支えられているなと実感しています。
それ以外では責任感が大きくなったと感じます。
ゲームキャプテンもさせていただいて難しさも感じますし、逆にチームがうまくいった時の嬉しさも感じます。
その中で小林さん(小林亮太キャプテン)の凄さを改めて感じました。
ですが僕は小林さんの真似をするのではなく、
自分の色を出して小林さんを支え、チームを引っ張っていきたいと思っています。

Q.自分の色とは?
とにかく気持ちで引っ張って行くところですね。
勢いといいますか、元気の良さ、ポジティブさとかチームが下を向いている時にでも、もう一つ頑張れるところです。
他には軸がブレないところがあると思うので、目標に向かってハードワークを続けるというのは僕の持ち味だと思います。
良い意味で人に影響されず、自分の道を行けるというのも強みだと思います。

Q.小林キャプテンの凄さとは?
周りをすごく見ていて、一人というよりもチーム全体を持ち上げて行くというところ、
その発言一つ一つでみんなを元気にできるか、励ませられるかということを常に考えています。
言葉遣いの部分でも試合中チームが辛い場面ではゆっくり話をして、
みんなを落ち着かせたりしているところは純粋にすごいなと感じます。

Q.小林キャプテン自身は背中で引っ張るタイプで口下手だと言っていましたが…。
全然そう思いません。言葉でも、もちろん身体でも引っ張っていますし、
それにプラスで周りのことをしっかり見れて本当に凄いと思います。
自分の中でのハードルが高いんでしょうね。それをすごく感じます。
その辺りは小林さんを見ていて自分が吸収できるポイントだと思っています。

Q.一緒にバイスキャプテンを務める伊藤選手については?
伊藤さんは冷静に状況を見て的確にモノを言える人なので、完全に僕とは真逆のタイプです。
対局する人が一緒にいた方が良いと思うので、僕らがプレーで引っ張って、伊藤さんには冷静に周りを見てもらう。
言葉遣いも上手で発言力があって、その部分は僕にない部分なのでとても尊敬しています。

Q.今シーズンのリーダーは「若手が伸び伸びできる環境」をテーマにしていると聞きましたが、意識していたことは?
同期とは元々よく話すのですが、特に自分より年下の選手とよく話すようにしました。
オフフィールドの部分でも、オフ何してた?とかストレッチ中にちょっかいをかけたりとか。
あとは自分が伸び伸びしているのが一番だと思っています。
3年目でもこんなことができるんだと思ってもらえたら、もっとみんながやりやすくなるんじゃないかと思っています。



Q.今シーズンFWとして一番伸びたことは
セットプレーですね。ユニットで考えるとそこに尽きると思います。
去年よりラインアウトの獲得率も上がっていますし、スクラムも安定しています。
スクラムに関しては、今シーズンから具コーチ(具東春スクラムコーチ)が教えてくれることになって、
目標を明確にしてもらえる事によってみんなが同じ方向に進んでいます。
しっかりと具コーチについていこうというマインドができたので、そこが伸びたポイントかなと思います。

Q.具コーチのスクラムについてはいかがですか?
もう…とにかく徹底していますね。
スクラムに正解はないと思うんですが、具コーチが思うシステムがあって、
そこに対して徹底していて全くブレないです。
何よりスクラムが好きなので、その高い熱量で教えてもらえています。
それが具コーチの良さだと思っていて、
それに対して僕は、みんなをまとめて具コーチの方向性に合わせて行くのが役目だと思っています。

Q.Hondaらしいスクラムとは?
とにかくパッションです!
W杯で智元さん(具智元選手)が思いっきりガッツポーズしたと思うんですが、
智元さんは毎回のスクラムにめちゃくちゃ気合が入っていて、
そのスクラムにかけるパッションが全員に浸透しています。
去年のトップリーグ開幕戦でリコーに対してスクラムを押し込んだ時、
智元さんに被って僕が思いっきりガッツポーズしたシーンがあったんです。
多分テレビカメラは智元さんのガッツポーズを狙っていたと思うんですが。(笑)
その時押した後の嬉しさが湧き上がってくる感覚がすごくて…
うまく言い表せないですが、とにかくパッションの部分に注目してほしいです。
特にHondaのフロントローは若いんですよね。
一番年上で滝澤さん(滝澤翔太選手)川俣さん(川俣晃人選手)なので、28歳ですね。
『スクラムはベテランの方が巧い」とよく言われるのですが、そう言われるのが大嫌いなんですよね。
ベテランの人たちが相手でも、自分たちが負けていないという事を証明するためにも
情熱の部分は忘れてはいけないと思っています
ぜひスクラム後のガッツポーズは皆さんに見てもらいたいです。

Q.2列3列についてはいかがですか?
小林さんを筆頭に、よく動いてよくタックルしてくれます。
ティール(ポール・スクーマン選手)もかなり激しくて、とても頼もしいです。
その激しさは2列3列には必要だと思っていますし、チームにも伝わっていっています。

Q.フランコ・モスタート選手の加入はいかがですか?
めちゃくちゃいい刺激になっています。
良かったと感じたエピソードがあって、スクラムを2日に分けて組んだ日のことです。
1日目に僕らのグループがうまくいかず、かなり押し込まれて気持ちが沈んでしまいました。
その次のスクラム練習が始まる時に、僕たちのチームを集めて
「このスクラムやってやるぞ!絶対に情熱を忘れるな!」と喝を入れてくれて、
チームが固まりリベンジができたということがありました。
僕らにとって一番大切な『闘争心』を全面に出して行くという点で、
フランコは常に全力でプレーするスタイルなので、
すでにチームにコミットもできていて、必要な存在だと思います。

Q.藤浪選手の今の調子はどうですか?
かなりいいです。
周りが見えてきたというか、今まで試合慣れしていなかったので
自分のプレーに集中しすぎて視野が狭くなっていた時が多かったのを感じていたのですが、
最近は練習でも周りに声かけができて客観的に見ることもできているところが調子の良さを感じます。

Q.フッカーの激しいポジション争いについてどう考えていますか?
めっちゃポジティブですね。もちろんそうでなくてはいけないかと思っていますし、
一つ下の季依典(呉季依典選手)に対しても良いライバルだと思っています。
この関係性がまさに切磋琢磨して行くことなんだと感じています。
やはり川俣さんも季依典も自分が持っていない能力を持っていて憧れることもありますが、
僕は一貫性があって、パッションがあるところが持ち味なので、それを最大限発揮できるように頑張っています。

Q.呉選手とはライバルだと思えないほど仲が良いですよね。
そうですね(笑)季依典もすごく人懐っこくて。
とにかく仲が良いので僕がリザーブだったとしても、
「いつでも準備しておくから思いっきりやってこい」と声かけもします。
もちろんスタメンで出たい気持ちはありますが、
メンバー発表の時にどちらの名前が呼ばれようがマイナスな気持ちになることはないです。
コレはめちゃくちゃ良い関係だと思っています。
向こうも同じことを思ってくれてたら良いんですが(笑)
めっちゃムカつくとか思われてたらどうしよう…。

Q.ライバル同士で仲が良すぎるのは、一般の方からすると少し特殊なイメージがあるかもしれませんね。
特殊といえば特殊かもしれませんね。
他競技などのプロのチームではギスギスしているという話も聞きますが、
僕たちは絶対にそうではないと言い切れますね。
フロントローという特殊なグループというのもあると思います。
僕と季依典で言うと、お互いに教えあったりとかもしていますし、
自分に持っていない部分に対してはリスペクトしています。

Q.今シーズンにかける特別な想いはありますか?
バイスキャプテンになったと言うのは大きいです。
チームを引っ張っていかないといけない責任はもちろんありますし、
結果で示さないといけないと考えています。
特別な想いに関してはその部分になります。


Q.開幕延期になった時の気持ちは?
正直、驚きがありましたが、元々悲観的なタイプではないので、
「コントロールできないことは仕方がない」とすぐに切り替えました。
その上でチームのみんなのことを考えました。今どう思っているんだろうと…。
なので特にその日の練習は自分が声を出して盛り上げてやろうとシフトしました。
準備期間も増え、まだまだ練習もできますし、逆にポジティブかなと思っています。

Q.開幕戦がNTTコミュニケーションズとの戦いになった事に対してどう思いましたか?
リベンジしかないですね。それしかないです。
去年は本当に悔しかった。ホームでの逆転負けっていうのが特に…。
今年もNTTコミュニケーションズは強いと思いますが、
特に初戦ってなると僕たちも気合が違うので、勢いで飲み込み必ずリベンジします。
キーポイントとなるのはセットプレーのところです。セットプレーで圧倒できれば必ず勝てます。
もちろん自信はあります。

Q.今シーズン通してのFWのキーマンは?
1番の選手だと思います。誰が出るかわからないですが。
今は鶴川と藤井が試合には出てますが、二人とも器用ですしよく動きます。
他にも滝澤さんや赤平もいて誰がポジションを取ってもおかしくないです。
僕の中ではスクラムのキーマンだと思っています。
スクラムの要でもありますし、1番の選手の活躍はチームを左右すると思っています。

Q.今シーズンはどのようなラグビーをしていきたいですか?
言っていいのかわからないですが、
僕たちは客観的に見ると優勝候補には入っていないチームなんだろうなと思っています。
ですがその代わり、"何かをしでかすチーム"だと思っていて、
いわゆるダークホースの存在になりたいと思っています。
絶対に勢いのあるチームなので、その勢いで上位チームも食っていきトップリーグを荒らしていきたい。
コレは僕が1年目の時から考えていました。
このような気持ちが次のステップに進むために必要な要素だと思っています。

取材日:2021年1月28日

(取材・文:中田裕人広報)

▼前回のインタビュー記事はコチラ

#3 伊藤 玖祥 『バックスの団結力』

ニュース一覧にもどる
RELATED NEWS